「これを」

島岡さんから渡されたのは小さな箱だった。

「お返しなんて、気を遣わなくても」

僕は、恐縮した。
現在はギイの第一秘書である島岡さんには、実は先日の2月14日に万年筆を渡していた。
もちろん特別な意味を込めたものではなく、偶然にもヴァレンタインコンサートの後に会う予定ができたため日ごろの御礼を込めた贈り物だった。

今日は3月14日。
本来ならアメリカでこの日にお返しなどという習慣はないので、日本育ちの僕を島岡さんは気遣ってくれたのだろう。

「僕、いつもお世話になってますから、本当に心苦しいぐらいで」

掌に載せられた小箱を、それでも無理に押し返すわけにもいかず、かといってすぐに開けてしまうのもためらわれて僕は視線を落とした。
綺麗にリボンをかけられたネイビーブルーのその箱は、そのまま島岡さんの誠実な人柄を思わせた。

「お返しというほどでは。私も”いつもお世話になってますから”」

島岡さんは僕の台詞を繰り返して微笑んだ。

「島岡さんをお世話したことはないですよ」
「いいえ、こうして会っていただけるだけで」
「え?」
「いえ。義一さんが生き生きと仕事に取り組んでいられるのは、託生さんのおかげでしょう?そのおかげで私の仕事も大変スムーズですよ」
「それはよかった。であれは、もっとギイが楽しく仕事できるように、喧嘩は控えるようにしますね」

島岡さんでもこんな冗談言うんだな。

「うらやましいですよ、義一さんが」
「・・・島岡さんの有能ぶりは、むしろギイがうらやむぐらいですよね?」
「ふふ、そっちではないんですけどね」
「パートナー関係のことですか?そこも島岡さんにうらやましがられるとちょっと複雑ですけど・・・正直ギイの助けになっているのか、僕にはよくわかりません。だって」
「だって?」
「・・・ギイとは、住む世界が違うんじゃないかって・・いつもは忘れてるんですけど、ほんのたまに、昔の感覚がよみがえってくることがあって」

そうだ。
それはぬぐいがたい感覚だ。
母から植え付けられた、庶民と金持ち、という2分された価値観、そして実際に資金力が生み出す力を目の当たりにして、一人日本で夢からさめたような気持になったとき。
それは、ふとした瞬間に僕を襲う。
そのことをギイに伝えたことはないけれど。

「ごめんなさい。島岡さんに、こんなこと」

島岡さんならきっと誰にも、ギイにも言わないだろう。
だから胸の内を明かすようなことをしてしまうのか、僕は。

ソファの座面が少し、傾いた。
気が付いた時には、島岡さんの肩が僕に触れ、その男性的な美しさでもって整った繊細な美貌が僕の眼前にあった。

「たくみさん、義一さんに言えないことも、私にはおっしゃってくださっていいんですよ」

ね?

優しく微笑まれると、ぼう、と催眠術にかけられたかのように、自然に僕はうなずいていた。



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本当に久々で、も・・・表のブログ同様、謝罪のしようがございません・・・。
しかも、いきなり島タクだし・・・すみません。
島タクが書きたくて飢えておりました。
まだちょっと続きます。
これで終わったら島岡さんに怒られる(笑)

ちーさま、かなさま、ラッキーさま、三平さま、しのさまコメントありがとうございました。
もう、コメントの内容を覚えていらっしゃらないかもしれません、というぐらい遅くなってしまい申し訳ありませんでした。
間男だったはずの章三ですが、純愛まっしぐらでございます。
いや、たくみ君を置いてったギイが、だめだ。
普通に周囲の恋愛とかも見てて思うのですが、やっぱりコミュニケーションは大事ですよね。
ちゃんと伝えないと!
黙っていても離れていてもわかってくれるだろう、というのは傲慢だなあ・・・と個人的には思う次第です。



また( 2017/07/30 17:56 イニシャル""の方)非公開メッセージもありがとうございます!
こちらもご返信遅くなり・・・いや遅いっていうレベルを超えてしまい、申し訳ありませんでした。
心の中ではものすごく章タクに燃えているのに、なかなか筆が進まず、すみません。
なのに今回は島タク・・・章タクどこ行った、いやギイタクは!!??
4月から仕事の方も異動予定で相変わらず遅筆継続しそうですが、もしまだこちらにいらっしゃるようなことがございましたら、今後ともよろしくお願いしますm(__)m
是非また章タクや島タクで盛り上がりたいです。


さて、あまりにもこちらの日記の更新速度が遅くなっているため、日記の非公開メッセージを一度休止させていただこうと思っております。
今週中には、リンクを外させていただきます。
私のお話を考える源泉であり、原動力ですので、また私の状況が落ち着きましたら復活させたいと願っております。
勝手なことで申し訳ありません。
いつも応援してくださってありがとうございます。