※※※前回同様タイトル通りの自分勝手な妄想してます。
   弱虫ペダル(東堂さん、巻島さん)とタクミ君が絡みますので、要注意でございます。
   弱虫ペダルという作品自体をご存じない方は本当にすみません。 




黄色い悲鳴に、託生は巻島と顔を見合わせた。
心なしか巻島の眉間にしわが寄っているような気がするが、気のせいだろう。
食事中で行儀が悪いと思いつつ、二人して席を立ち、柵から階下を見下ろした。

「っ、尽八・・・」

真っ黒で艶やかな髪に包まれた小さな頭。
スーツの上からでも分かる均整の取れた筋肉質な体、あれは・・・

「巻ちゃん!奇遇だな!」

巻島曰く、高校生の頃から変わらないという、巻ちゃん呼び。

「・・・マジか、あいつ~」
「東堂さん・・・」

巻島が託生の目の前で、左手で小さな顔を覆った。
その左手薬指にはきらりと光るプラチナの細い指輪。それは細長い指によく似合っていた。
そして指に覆われた白い陶磁器のような頬は・・・真っ赤だ。

階下からこちらに手を振っているのは、巻島の8年来の恋人である、東堂尽八。
プロロードレーサーで、世界の山を舞台に戦い続けている男だ。
高校生の頃、巻島と山頂で競り合った男はいつしかプロへ。
一方巻島は、英国に留学後、さんざん迷ったあげくにファッションの道へ進み、ともに成功を収めて今に至る。

プロの道は互いに分かたれたが、プライベートでは東堂が20歳になった8年前の8月8日にまさかのプロポーズで、いきなり友人から恋人兼、事実上の夫夫へと昇格したという衝撃的な経緯を辿ったという。

自転車で鍛えた堂々とした体躯をラフなジャケットで包んだ東堂は、周囲の黄色い悲鳴に惜しげもなくウィンクと手を振って応えながら、存在感抜群の男は巻島と託生の座るテーブルへと到着した。

「何が奇遇だよ、おまえ。思いっきり確信犯だろうが。目立ちすぎるからこういうの、ヤメロっしょ。せっかく託生と二人で静かに飲んでたのによぉ」

顔を覆ったままの巻島は指の間から東堂を睨みつけて愚痴る。

「ハッハッハ!巻ちゃん、おまえはとうに目立っていたから今更俺が来たところでどうという事もあるまい!さて、それはそうと久しぶりだな、葉山君」
「あ、お久しぶりです、東堂さん。今はシーズンオフですか?」

目の前のあっという間の出来事に呆気にとられていると、突然声を掛けられて慌てた。
不思議な色の瞳がこちらを見つめている。
なるほど。高校時代からすでにファンクラブがあったというのも頷けるほどの美形ぶりだ。ギイを見慣れているが、こちらはまさに山神という呼び名がふさわしい和の雰囲気を漂わせている。

「ん。その通りだ。この貴重な期間に愛しい巻ちゃんの側を一瞬でも離れることなど、できんよ」
「ちょ、やめろ。人前だぞ!おまえのファンだっているんだぞ!」
「こっちは死角だから大丈夫だし、別に見られたとしても何の問題もない」

応えながら巻島の隣に腰掛けた東堂は一瞬で、取り乱す巻島をなんなく腕の中に納めてしまった。

「巻ちゃん。おまえと俺の仲はすでに公認済みなのにいつもそんなに慌てるのは、逆に見せつけたいからなのか?」
「俺はおまえみてーに心臓に毛は生えてないからな」
「ひどいな巻ちゃん。それを言うなら俺だっておまえのようにランウェイをあんなに堂々と歩けはせんよ。なあ、葉山君」
「巻島さんはいつも堂々としていてかっこいいですよ。いつか共演させてもらいたいぐらいです」
「なるほど、それはいいな。さぞ二人とも舞台映えすることだろう。だがな、いくら巻ちゃんが君を可愛がっていたとしても、巻ちゃんはやれんよ」
「山神から盗ろうなんて大胆なこと考えませんよ」
「当然だ。だがうちのピークスパイダーは時折俺を出し抜くから油断はできんのだ」

愛おしそうに東堂が巻島を見つめる。

「俺がいつおまえを出し抜いたってんだ」
「この間舞台裏にいた男は?」
「ただのモデル仲間。あとその呼び名、もう関係ないから」
「そうか・・・レンさんに確認しておこう」
「兄貴に確認するまでもないっしょ」

若干目を逸らしつつ、巻島がそつなく応える様子に、東堂が両眼を眇める。
自身に関わる色恋沙汰はかなり無頓着で無自覚である(と、よくギイに言われる)ものの、意外に他人のことはよく見えるものだ。
巻島は何かを隠していて、東堂はそれにめざとく気がついているのだろう。もしかしたらすでに一悶着でもあったのかもしれない。
ほらな、とでも言うように片眉を上げて東堂が託生を見る。

これだけノロケた雰囲気で巻島が悪さをしているとは思えないが、巻島にちょっかいを出す人間はいくらでもいると言うことを東堂は自分に言いたいようだ。
嫉妬心を隠そうともしない東堂。
東堂に心配掛けまいと下手な芝居をうつ巻島。
二人の間に漂うのは、ただただ濃密な愛情。

ドルチェのナイフとフォークを思わず止めて二人を眺めると、

「お口に合いませんでしたか?」

通りがかったウェイター(???)に声を掛けられた。

「いえ、そんなことは。とても」

顔を上げて、とても美味しいですよ、と言い掛けて、心臓が止まる気がした。

「・・・どうしてここに?」

レンズに少し色が付いた黒縁めがねにオールバックの髪・・・ただし真っ黒だったので、ウィッグのはずだが・・・紛れもなく一瞬で分かった。

「俺が託生を取って食うとでも思ったか?」

すぐに気がついた巻島がにやにやしながら、その黒髪メガネのウェイターを見る。

「蜘蛛の巣を張って幼気な蝶を待っているんじゃないかと思いまして」
「お望みならそうするぜェ?」
「おいおい巻ちゃん!どうせ捕まえるなら俺を」
「自分から飛び込んでくる奴、捕まえてもおもしろくないっしょ」
「~。そりゃないぜ巻ちゃん!」
「ほら、巻島さんは東堂さんで手一杯でしょう?うちのに手ぇ出さないでくださいね」

にっこり(ただし、相当刺々しい)笑顔で巻島を牽制したギイは、託生にウィンクした。

「・・・なにやってんの?」
「開口一番それかよ、託生。あまりに冷たい・・・」
「あ、ごめん。えーと・・・会えてうれしいよ、ギイ。でも仕事は?」

よよ、と芝居がかった仕草でウェイター・・・に扮したギイが顔を覆ったので、一応フォローしておく。

「巻島さんと東堂さんだけに美味しい思いをさせとくわけにもいかないだろう?」

横に座ったウェイターもどきにナチュラルに肩を抱かれる。
階下からは死角のはず・・・だと信じたい。

「安心しろ義一君。俺は巻ちゃんしか目に入らない」
「そうは言ってもね、東堂さん。託生の魅力は今や全世界共通のものなんで油断ならないんですよ」
「葉山君の魅力は認めるが、巻ちゃんの妖艶さと来たら・・・。いいか、夜なんてな」
「おまえっ、いい加減にしろっしょおぉぉ!」
「いやいや、夜といえば託生も」
「ギイ!!いいから黙って!!!」

なにやら不穏な自慢合戦を始めた恋人たちの口を巻島と託生は、揃って同時に塞いだ。
ちらりとお互いの真っ赤に染まった顔を見る。

・・・お互いに苦労するな。
・・・苦労しますね。

確信犯の恋人たちは手に負えないのだ。
残念だが、宴はここまでだ。
アイコンタクトを交わして頷くと、それぞれ恋人を引っ張って、裏口へと急いだのであった。





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一応ギイタクなんですが・・・思いっきり趣味に走ってしまいました。すみません。
お遊びはここまで(笑)です。
おそらく弱ペダとのコラボはこれっきりなので、お許しいただければと思います。

前回の更新が6月19日でした。
二か月も空いてしまい申し訳ありません。

まずはBeach10.への拍手ありがとうございました。
(6.19 19:08 "にゃんこ"さま)
超スローペースは更新で・・・本当にすみません。言い訳の使用もありません(^^;)
(6.20 00:04 にくださった方へ)
人事異動・・・本当に凶と出るか、吉と出るか、ですよね。
組織に所属する以上、辞令には従わないといけないのですが・・・納得いかないこともあります。
新境地で気持ちよくお仕事をされていると良いのですが。

またかなさま、しのさま、ちーさま、ラッキーさま、rinさま、香織さまコメントありがとうございました。
亀の歩みで、やっとギイ登場までこぎつけられそうです。
またボチボチと更新させていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
転職の件でもいろいろとお気遣いありがとうございました。
約2か月ほど経過いたしました。
横のつながりが強い中で、非常に周りには親切にしてもらっています。
色々と思うところもありますが、またそのあたりもUPさせて頂きます。

また、非公開メッセージもありがとうございます!
(6/19 19:59 イニシャル”Ki”の方)
6月半ばまでお仕事お忙しかったとのこと、今は落ち着かれていらっしゃいますでしょうか。
もしかしたらまたお忙しくされているかもしれませんが・・・
Beachでは赤池君がお姉さま方に逆ナンされているのですが、年上からモテそうだなぁ、と思って入れたエピソードでした。
年下にも人気ありそうだけど、年上の百戦錬磨の方々に迫られて、ちょっと引き気味な感じだとそそられます(笑)
この先の展開は・・・ギイとタクミ君のやり取りがメインになりますが、ギイが往生際の悪さを発揮してくれると思います( ;∀;)!

(7/03 22:45 イニシャル”Ka”の方)
優しいお気遣いありがとうございます(´;ω;`)
色々いっぱいいっぱいで、これまで以上に至らないことばかりで、職場でも勉強しなきゃいけないことがたくさんあって、今は正直、仕事も含めて身の回りのことに追われている状況です。
でもいつまでもこんな状況じゃいけないので、頑張って冷静に状況を見れるようにしたいです・・・