久々のbeach、前作より約一年過ぎておりました。
申し訳ないです。 
これまでのお話については、下記リンクカテゴリに含まれていますので、
もし初見の方がいらっしゃったら、よければご覧ください。
ちょっと探すのが大変かもしれませんがm(__)m

小話カテゴリ(別冊でちょこちょこ書いているお話たち)

 また、前作はこちらです。
Beach  9.

あまりにも小話が溜まりすぎてしまったので(約50話程)、リンク整理もしたいと思いつつ、もう少しお時間頂ければ幸いです。
それでは本編です。



~Beach 10.~


次の日、また二人はビーチに出た。
今日は章三が念のため買っていた、白のビキニだ。黒と一緒に購入したらしいのだが、デザインが若干違っており、ホルターネックではなく、胸のところはチューブトップになっていた。
実際にこんなモノを身につけたことが無いから分からなかったのだが、着てみるとズレ落ちてきそうで非常に心許ない。
下の方は、両脇がボリュームのあるリボンで結ぶタイプなのだが、これはこれで、歩いている内にほどけやしないかと気が気でない。
それを章三に言うと、女性モノの水着のことはさっぱりなんだから、買うときにそこまで気にするかと逆ギレされてしまった。
だがさっきから、ちらちらこちらを見ているところを見ると、どうやら気にはしてくれているらしい。

白のビキニを身に纏った託生は昨日の妖艶な雰囲気とは打って変わって、清楚で洗練された印象だった。腿の付け根で揺れるリボンが男たちを誘っているように見える。
本人の気づかぬところでまた男たちの目を奪っていたのだが、今日は章三がぴったりと横についているため、なかなか手出しができない。

昨日、慌てていたためギイのパーカーを着て帰ってきてしまった。
ランドリーサービスに出しておいたので、もし会えれば返すつもりだ。昨日の様子では、今日明日で帰るような雰囲気ではなかったから運が良ければ会えるだろう。

少しあたりを見回してギイを目で探している内に、少し章三と距離ができてしまう。
近寄ろうとすると、女性二人がすかさず章三に近づいて話しかけているのが聞こえた。
英語だったが、内容的にはナンパだということが分かる。しかもさりげなさを装って、ちゃっかり章三の肩や、剥き出しの腰あたりに手が触れていた。
なんとなくおもしろくないが、もし章三がその気なら邪魔するのも悪いと思い、手持ちぶさたにもう一度辺りに目をやると、こちらをじっと見つめながら、ずんずん近づいてくる影に気がついた。

「あ・・・」

ギイだ。

思い詰めたような瞳と、視線が合う。綺麗な形の瞳が揺れて、そのまま視線を外せなくなる。
ギイは明らかにこちらを目指していた。このままだと章三と鉢合わせするだろうが、パーカーを返す絶好のチャンスでもある。
章三に見つかるとパーカーを返すためとは言え、また色々言われるかもしれない。申し訳ないが、彼が女性たちに捕まっている間に、返してしまおうと思った。

章三はといえば、こちらを気にしながらも、押しの強い女性二人を相手に振り切るのを四苦八苦しているようだ。
託生は、思い切ってギイに向かって一歩踏み出す。それを目にした途端に、思い詰めたようだったギイの表情があからさまに明るくなった。
そんなに自分と話がしたかったんだろうか?

「また、会えたね。絶対、会えると思ってたよ」

今度はこちらに気を使ってくれたのか、日本語で話しかけてきた。本当に違和感がない流暢さだ。

「あの・・・、日本語、本当に上手なんだね」
「ああ。親父が日系だし、俺としては違和感ないんだけど」
「そっか」

どうりで、欧米系といってしまうにはエキゾチックな容貌だと思った。
それぞれの民族的特徴がすばらしいバランスで混じり合った希有な例なのだろう。何度見ても男前だ。
章三もきれいな顔をしているが、あちらは純日本男児という清廉な印象で、それぞれ違ったタイプだ。

ギイが手を伸ばして、託生の右腕を掴んだ。

「おいで。あちらに行こう」

章三のことは見えているだろうに、一向に気にする素振りは見せない。

「あ、ちょっとココ離れるわけには」

またトラブルに巻き込まれたら、今度こそ章三に迷惑をかけてしまうだろう。
それに逃げたそうにしている章三を置いていくわけにも行かない。

「いいから。日陰に行かないと、君の肌が夜大変なことになるよ」
「いや、そんな柔じゃないんだけど・・・待って、待ってってば」

しかし相変わらず、ギイは強引だった。
言われるままにぐいぐい引っ張られて、結局岩影に連れられてしまう。

「タクミ、会いたかったよ」

改めて向かい合って言われる。そんなに喜ばれると、パーカーを返すためだけに探していましたとは少し言いづらい雰囲気になる。
それに託生自身も、それは単なる口実だったような気がしていた。
本当は理由などなくても、ギイにもう一度会いたかったのではないかと、そんな気さえする。

「パーカー、返そうと思って。・・・昨日うっかり着て帰ってしまってごめんね」

持っていたバッグを差し出すと、ギイは受け取りながら少し残念そうに首を振った。

「それは君に・・・持っていて欲しかったんだけど」
「もらうわけにはいかないから」

もらってくれてもいいのにな、と言いながらギイはパーカーを取り出す。
その手が止まった。

「もしかして、洗っちゃった?」
「あ、ごめん!洗った方がいいかと思って・・・余計なことした?」
「いや、ありがとう。でも・・・洗わない方が良かったかな」
「そ、う・・・ごめん貸してもらった上に、なんか迷惑かけて」

何か洗ってはいけない理由があったのかもしれない。
手洗いじゃないとダメな素材だったとか?水に通すと傷む素材だったり?
よかれと思ってしたことが相手の利にならなかったらしいと知り、少し落ち込んでうつむくと、ギイが慌てた。

「ごめん!違うんだ!!・・・その、言いにくいけど・・・洗ってほしくなかったのは・・・」

ものすごく言いよどんでいる。
いったい何を言い出すのだろうとその顔をのぞき込むと、顔が赤くなっていた。

「やっぱり、いいや。ごめん。君はなにも悪くない。洗ってくれてありがとう」

結局なんだったのか分からないまま、ギイはそのままパーカーを羽織った。
反応がよく分からないものの、とりあえず受け取ってもらえたのでこれで義務は果たしたはずだ。目の端では章三がお姉さま方に囲まれて身動きとれなくなっている様子が見て取れた。どう見積もってもあまり嬉しそうな様子でもないので、早めに戻った方が良さそうだ。

「返せて良かった。じゃあ、そろそろ相棒が心配なんで、戻るよ」
「え、待ってよ!折角会ったんだし、今日こそもうちょっと俺にも時間をくれよ」

また、昨日と同じように前に廻り込まれて、引き留められる。
たしかに昨日も素っ気なくしてしまったし、託生自身もう少し話がしたい気もしたので、その場にとどまる。
そんな託生をギイは影になった砂浜に座らせて、自分も隣に座った。

「気になってたんだけど・・・昨日の、あいつさ。君の恋人なんだろう?肩抱かれて、仲良さそうだった」

肩を抱かれていたのは恋人演出を意識してのことだったから、ある意味章三の目論見としては成功したという事なのだろうが、ここはもう誤解を解いておいた方が良いだろう。
このままだといつまで立っても、章三は託生の恋人を演じ続けなければならなくなる。

「ああ。あれは、僕の親友だから」
「僕?」

ギイは、言葉の前半に反応した。

はっ!
そういえば、今僕は『女の格好』をしてたんだった!!

英語の時は一人称はすべて”I”なのでごまかし切れていたが、今は日本語で話しているので、違和感があるだろう。
まさかの真実を晒して信じてもらえるだろうか?
いや、その前に初対面の人に言うことでもないだろう。逆におかしく思われるに違いない。
ただでさえややこしいことになっているのだから、トラブルは起こさず穏便にすませた方がいい。




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ようやっとギイが出てまいりました。
もしかして章三がメインの話だったか?と思いつつ(笑)9話まで来てしまいましたが、10話目にて再登場です。
こちらのギイは「女性の姿をした(かつ、ビキニ姿(笑))」託生君しか知らない、のですが・・・託生くんがこの先どう乗り切るのか、それとも乗り切らないのか、あと、章三はどうするのか、見て頂ければ嬉しいです。

前回の、弱ペダコラボのお話、拍手ありがとうございました。
また、かなさま、しのさま、らっきーさま、ちーさま、rinさま、コメントありがとうございました!ご存知の方もいらっしゃって嬉しかったです。ご存じない方にも楽しんでいただけるように続きを描けるといいなぁ。
私の中では割と似た者カップルなのです(*´艸`*)


近況ですが、17日に現職で最終出社、送別会もしていただいて、盛大に送り出していただきました。
大きな花束を頂きましたが、素敵すぎて身に余りました。あまりに素敵だったので、こっそり下にUPします。
なぜだか同じ会場にいらっしゃった全く無関係の方たちにも拍手で見送られ(笑)、二次会で飲んだくれて、私の現職ライフは終わりを告げました。
同僚からは、「もう戻ってくるんじゃないよ」と言われ、いつも憎まれ口しか叩かない男性の後輩から、「まあ、もうこんなやり取りも最後ですね」と言われ柄にもなくしんみりして、ああ、本当に終わりなんだなぁと思いました。
終わりなんですが、月曜からまた新しい人生が始まる。
私を待ってくれている仲間たちのために、自分のために、頑張ります。
しばらくたぶん落ち着かないので・・・なるべく更新はいつものペースでやっていくつもりなんですが、万が一遅くなったらすみません。

20160617