※百合ギイタクです。





「え、明日は確か、んぐっ」

明日の予定をルクレシアに尋ねられ、バカ正直にスケジュール帳を取り出そうとしたタクミの口を、覚えのある熱い手のひらがふさぐ。

「アホ。そこは答えるところじゃないだろ」
「んぐぐ」 
「ギイ。私はタクミに聞いているんだが」
「タクミの仕事以外の時間はあいにくと、すーべーてー埋まっている。一秒たりとも他人に割く時間などない」
「なぜお前が答える、というのは愚問なのだろうな」

ルクレシアが舌打ちすると、ギイも人の悪そうな笑みを浮かべる。

「独占を許されてるのは私ぐらいのもんだ。諦めろルクレシア。今度こそはお前に分はない」
「いいのか、タクミ?目の前のこの女はかなりやっかいな物件だと思うが」
「うーん。その厄介なところが好きなので」

にっこりと笑うと、ルクレシアも今度こそ諦めたとばかりに肩をすくめた。

「なんだ。君も一筋縄では行かないようだ。だがますますいいね。簡単にオトせるようでは面白味もない」
「面白味だの何だの言ってる時点で、お前は私に永遠に勝てないだろうよ、ルクレシア」
「タクミ。私も厄介な女かもしれないけど、そこそこ仕事もできるし、君が望むなら君の公演について廻って君中心の生活をしてもいいし、逆でもいい。浮気もしないし、意外に都合のいい女だと思、っっ痛!・・・だから、なぜお前は私の足を踏んづけてばかりなのだ、キャンディス?」

性懲りもなく無駄口を叩いていたルクレシアは、細長い足でぐりぐりと己の革靴を踏みしめる妹を見た。
口元がひきつっているところを見ると、それなりに手加減無く痛いらしい。

「そこはもう説明する気もないわ、ルクレシア。帰りましょ」
「そうだ。帰れ帰れ」

ギイが蠅を追い払う仕草をする。

「イタタ・・・わかった、わーかった!帰るが、お前も仕事じゃないのか、ギイ?」
「いやな予感がしたから半休にしてある」
「はいはい、恐れ入った、もういい。もういい。お前の方がよほど動物に近いようだ。よしキャンディス帰るぞ」
「もう、さっさとしてよね!さっきから待ちくたびれてるんだから」
「お前さえ邪魔しなけりゃなぁ」
「なんか言った?」
「いいや、何にも。ではタクミ。残念極まりないが、今度こそさようならだ。ただし、次もあると思っているけれどね」
「あるわけないだろう!」
「ギイ、いちいち口出しを止めてくれ、正直うざい」
「安心しろ。お前の方がよほどうざい」

ぽんぽんと繰り出されていくコントのような応酬をタクミはにっこり微笑みながら見守っていた。
高校時代の、ギイとその親友章子とのやりとりを懐かしく思い出したからである。
もう7~8年前のことになる。
実にほほえましい光景だ。タクミにとっては。 
そのため、自分が目の前の美女に迫られていたことなどほぼ、意識から遠のきつつあった。

「それじゃ、タクミまた」
「?」

ぼんやりしたタクミは、ギイの阻止をかいくぐったルクレシアが素早く頬にキスをおとしつつ、タクミの掌に何やら紙を捻じ込んだ一瞬の行動に全く対応できなかった。

「?」 

「ルクレシア!お前この場だけじゃなく、今すぐこの世界から消えろ!」
「残念だがゴキブリは核戦争が起きたとしてもしぶとく生き残るそうだぞ」
「うるさい!」

遠くにギイの罵倒と、キャンディスを伴って立ち去っていくルクレシアの暢気な応答が聞こえている。
手には、なにやら秘密のにおいのする紙片。
頬にはキスの感触。

・・・ギイには内緒にしておいた方が、穏便に済むだろう。

恋人がこれ以上頭に血を上らせないために、タクミはそっと紙片をバッグに忍ばせた。




その小さな紙片がギイの目に触れるかどうかは・・・また別のお話。



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こちらの方、大変ご無沙汰しております、すみません!
ちょっと立て続けに身内と、それから母親の友人の母上が体調崩されたりして
なんだか年始からとてもハラハラドキドキの連続でした。
ようやく落ち着いたのですが、寒いと、怪我や病気が増えやすいので、自分も含めて
油断はできないな、と思います。特に雪だと滑りやすいので気を付けないといけませんね(><)

さて、そんなわけでちょっと落ち込み気味な感じだったので、お話は明るく仕上げようと頑張りました。
とりあえず、なんだかコントな感じで終わってしまい、ギイとタクミちゃんのラブラブがなくてすみません。
ルクレシアはギイと妹の目をかいくぐって性懲りもなくこれからもタクミちゃんを口説き続けそうです。
・・・ゴキブリなんで・・・

あゎゎ。精神状態が元に戻ったら、またラブなギイタクとか章タクとかまさかの島タクとか書きたいです!!


わたくしの拙い年末のご挨拶に拍手ありがとうございました。
また、しのさま、ラッキーさま、コメントありがとうございます。
今年も一年、なんとかブログを続けていられたらいいなぁと思います。頑張りますね!

非公開メッセージもありがとうございました!
(01/04 20:53 イニシャル"M"の方)
こんばんは!改めまして、明けましておめでとうございます!
年始のご挨拶をいただいていたにも拘らず、お返事が大変、大変遅くなり、申し訳ございません。
関東は大雪・・・なんだか本格的に冷え込んでまいりました。
どうかご自愛くださいませ。
この寒さを乗り越えれば春が待っている、と楽しみにして乗り越えたいです(><)
私は体調の方はかなり万全です。ご心配ありがとうございます~。