※百合ギイタクです。




逃げなければと思うのに、ルクレシアの視線の先から自分のものであるはずの体を動かすことが叶わない。蛇に睨まれたカエルとはまさにこの状態だろう。強い意志にロックオンされて、まるで縄で物理的に拘束されているかのようだ。
 その託生の硬直振りをみとめて魅力的な笑みを放ったルクレシアは、タクミの頬に手を伸ばしてきた。

「「ルクレシア!!」」

と、そこへルクレシアの背後から突如として掛けられた声。
完全に捉えられていた瞳を背後に遣ると、そこには腕組みをした大小二つのシルエット。

「ギイ!」

一人は、仕事でここにいるはずがない恋人だった。だがその隣の女性は誰だろう。
タクミより少しばかり下の位置からこちらに目線を送ってくる彼女は、ヘーゼルのきれいに整えられたマッシュルームヘアを揺らしつつこちらを睨みつけている。60年代のフランス女優のような雰囲気のある小柄な美少女だ。

「おい、ルクレシア。てっめ、人の大事なもんに勝手に触るんじゃない!」
「ギーイ。それ、お前が決めることなのか?」
「ったりまえだろ!タクミはあたしのもんだ!こそこそ調べやがって、お前はゴキブリか!?いや、それ以下か」
「いいね。それぐらいの生命力が是非欲しいと、かねてから望んでいたところだよ。バカ高い米国の医療費を支払うのはいささか辟易していたところだ」
「風邪さえ引いたことない頑丈な体で何言ってんだ。南極に調査旅行行っても体調一つ崩さなかったくせに」
「そこはお前もいっしょだろうが」

目の前で冗談だか本気だかよくわからない応戦が繰り広げられる中、美少女が託生をじーっと見つめてくる。いや、多少の敵愾心を感じるのは気のせいではないだろう。
互いの才能への嫉妬渦巻く音楽界に身を置くタクミはそのあたり、意外にビンカンだったりする。

「えーっと・・・」

モノ言いたげな美少女に、とりあえず目礼してしまうのは、事なかれ主義というよりは、日本人としての作法だ。

「あなた、ルクレシアの何かしら?」

くい、と眉を上げてその目礼を撥ねつけた美少女の口から、見た目と違わない鈴を振ったようなきれいな声が流れ出てきた。

「何、と言われましても、今日お会いしたばかりで・・・初対面ですけど」
「くっ!」

途端、美少女が悔しそうに拳を握った。爪が手のひらに食い込んで・・・痛そうだ。

「ルクレシア。あなた・・・あたしという者がありながらっっ」

怒りなのか、顔を真っ赤にしてかすかに震えている。

「・・・あなたが?」
「そうよ!私がルクレシアの一番なの!あなたが気軽に近づいて良い相手じゃないわっ」

近づいてきたのはタクミではなく向こうの方なのだが、火に油を注ぐのは必至なのでこの際黙っておく。
それよりいきなり降りかかってきた火の粉を何とかして振り払いたい。
どうやら触れてはならない人物に触れてしまったようだ。 

「あのぉ、ルクレシアさんとは何もないので、特にご心配されることは」
「会って初日に何かあってたまるもんですか!!」

逆ギレされた。
勘違いで暴走している相手を、いったいどうなだめるべきなのか。

「おいおい、キャンディス。そう猫みたいにつっかかるもんじゃない。タクミの美しさに嫉妬でもしたのか?心配しなくてもお前のかわいらしさもなかなか負けてはいないぞ?」

横から口を出したルクレシアが、火に油をに注いでくれた。
大量に。

「ルクレシアが節操ないからこんなコトになってんでしょーが!元はといえば、あなたが!見境無く!あっちこっちに!フラフラと!」
「止めてくれ。タクミが誤解するだろう」
「これのどこが誤解なの!」

叫ぶキャンディスの肩をルクレシアは宥めるようにぽんぽんと叩くと、タクミに微笑みかけた。

「妹が失礼したね。若干シスコン気味なんだが、まあ、見ての通りかわいいもんでつい甘やかした結果がこれだ」
「はあ・・・え・・・姉妹?」

先ほどの会話から、まさか姉妹とは想像しなかった。
英語のシスターには確かにほかの意味を持つ場合もあるのかもしれないが。

「若干タイプは違うが、正真正銘、両親とも同じくする姉妹だよ。キャンディス。いい加減私の恋路の邪魔は勘弁してくれ。お前が現れる度に目の前から美女が消え去っていくのだ。これまで何匹の大物の魚を逃したことか」

大げさに天を仰いで首を振るルクレシアの形の良い、エナメルの靴先を容赦なくキャンディスが踏みつける。

「っっ。おい、少しは手加減しろ」
「する必要性を感じないわね。そもそもフィッシング感覚で恋愛してるからそんな目に遭うんでしょうが。私のせいじゃないっての!」
「そうかい?まあそう言うことにしておこう。であれば、態度を正すことにして、タクミ」
「はい?」

姉妹漫才の手前、逃れられたと思ってほっとしたのもつかの間、いつのまにかギイに腰を抱かれていたタクミは呼ばれて、ビクリと肩をふるわせた。
この際、自分たち4人が、少ないとはいえ他にも存在するビジター達の衆目を集めていることは、敢えて無視することにする。

「話がうやむやになったと思って安心した?」
「え・・・いえ、その」
「悪いが口説いている途中だったからね。このまま半端で終わらすつもりもないんだ。私をゴキブリみたいに睨みつけているそこの女の視線を無視してでもね」
「ちょっとルクレシア!」
「おい、ルクレシア!だからタクミに手を出すなっつってるだろうが!」
「ギイ。お前がタクミに好いてもらえたなら私でもチャンスはあると感じるのだが」
「どこが!」
「全部」
「はあ?節操ないお前と一緒くたにするな」
「ふふん。お前のもろもろバラしてやってもいいんだがな、今日は勘弁しておいてやる。で、タクミ」
「は、はい」
「明日の仕事は何時まで?」
「は?」






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このHoney-Beeについては、全体的にちょっと軽い感じでいきたいな、と考えております。
ここ数日ウィルス性胃腸炎で寝込みまして・・・私がちょっと疲れ気味のせいなのか(笑)
まあ、ギイ(♀)はもちろんおモテになってんでしょうし、そうなれば類は友を呼ぶ(?)ということで
同じような、女子からモテる女子とか出てきてもおかしくないな、と。
キャンディスはもちろん当て馬です。
なんか軽い感じで楽しんでいただけたら嬉しいです。
今回は甘い話じゃなくてすみません。

それはともかく、ウィルス性の胃腸炎が流行っているそうなので、皆様もどうかご自愛ください。
基本はやはり手洗い、うがいですが、人混みではマスクもお忘れなく!
胃をやられますと、体力がもってかれて大変ですね(T T)

・・・それからここでお伝えすることでもないのですが・・・表のほうのNovelListの更新が止まっていて、ご迷惑おかけしてます。ちゃんとメンテナンス致しますので、少々お待ちくださいませ~(><)


前回の近況、小話、そしておわび文への拍手ありがとうございました。
また、ラッキーさま、かなさま、しのさま、ちーさま、コメントありがとうございました!
引っ越ししたり、引っ越しのストレスで島岡さんを暴走させてしまったり(笑)いろいろやらかしておりますが、今後ともよろしくお願いいたしますm(_ _)m


非公開メッセージもありがとうございました!
(11/30 20:56 イニシャル"Ki"の方)
前回は、島→タク妄想失礼いたしました~。私の中ではあのままタクミ君が押し倒される感じなのですが・・・そこらへんはまた、各勇気と気力が出てきたら、こちらにUPしたいと思います。よろしかったらまたおつきあいくださいませ!
でも万が一、万が一ですよ、こっそり島タクが成就したとしてもギイって速攻気がついちゃいそうですよね。そして壮絶なバトルとかお仕置きとか、争奪戦とか、・・・お仕置きバトルとか?(タクミ君が両方からお仕置きされ、る?)状況になりそうで、おいしそ、あ、いえ・・・かわいそうだなと思いました(苦笑)ギイがこれぐらい手ごわくないと逆に倒しがいがないかな?あれ?なんだかラスボスになってる?
12月になるから寒さに気を付けてと言っていただいたのに、さっそく胃腸壊したわたし・・・反省しております(涙)

(12/15 21:11 イニシャル"S"の方)
な、なるほど、そんな展開というか内容なのですか・・・。せっかく完成させたものを書き直すというのはなんだか残念です(TT)なんだか最近、「後付け」のお話しばかり(ブルーローズもそんな気が・・・)のように感じで、残念です~。軸がブレてしまったのかな?う~ん。教えてくださってありがとうございます!!

(12/17 19:41 イニシャル"Ka"の方)
お優しい言葉をかけてくださってありがとうございます!
やっぱりブログ運営している以上、コンスタントに情報(心の叫び)を載せていきたいっと考えておるのですが、なかなか自分の思い通りにいきませぬ。たぶん自分の能力と、目標にかい離があるんだろうなぁと薄々勘づきながら(^^;)どうしたもんかと、思っております。なんかいいペースをつかめたら良いのですが・・・。いつも待っていてくださってありがとうございます。