※百合ギイタク、思いついたのをぽつぽつ。
 正式にお話にするか、まだ決めてません。
※今回ギイは名前だけの登場です~。 



「へえ、なるほど・・・あの女が執着するわけだ」

タクミは、突然現れた目の前の圧倒的存在感を放つ女を見た。

完全に、気圧されていた。
女の発する、知的威圧感、存在感、意志の強さと言ったものすべてが、タクミの華奢な体を押しつぶそうとしているかのようだった。

ギイとは違う、長い長い金髪は豪奢なうねりを象りながら腰まで届いていたが、それらはすっきりと首もとで一つにまとめられていた。
人を食ったような笑みを浮かべた唇も肌の色に近いもので、あとは軽く薄化粧を施しただけ、服装も地味なチャコールグレーのパンツスーツ。
だが、女の持つ華やかさは隠しようもなく、スーツの上からいやがおうにもスタイルの良さが際立っている。

こちらを見つめる金茶の瞳は、肉食獣のように鋭くタクミを捕らえていた。

可憐な花のように清楚にたおやかに佇む天才バイオリニストと、豪奢な金髪を持つ背の高いモデルのような女の組み合わせは、部屋の片隅であるにも関わらず、会場でいやでも人目を惹いたが、あまりの完全な一対に、誰も近寄ることができないでいる。
従って、小声でかわされる会話は、他の誰かに聞き取られる危険性はほぼ皆無と言って良かった。

「あの、女って・・・」

タクミを値踏みするような視線でじろじろと見た後の不躾な一言。
だが自分のことなどよりも、『あの女』の方が気になる。

「知っているだろう?君の、恋人だよ」

恋人、という時、女は一層声を潜めた。

「どうして、それを・・・」

タクミは、大きな瞳を不安げに揺らした。

どうしよう、この人は、私とギイの関係を知っているの・・・?
もちろん友人の中で知っている人間はいるが、この女性の素性が分からない限り油断はできないのだ。

「・・・おいで、少し歩こうか」

女は目で合図して、ナチュラルに展示を眺めて回るように歩き始める。
タクミはそれを何とか足で追った。

「どういうことですか」

今回の展示の目玉である巨大なダイヤモンドの飾られた18世紀の王冠を目前に眺めながら、タクミは隣に立つ女に尋ねる。

「そんな顔をするもんじゃない。カワイイ顔が台無しだよ、タクミ」
「・・・貴方にそう呼ばれる覚えはないのですが」

そもそも女の名前さえ分からないのだ。

「失礼、名乗ってなかったね。ルクレシア。ルクレシア・モーガンだよ。ちなみに独身だ」
「・・・ミス・モーガン」
「他人行儀だね」
「他人ですから」

この謎めいた美女がいったい何をしたいのだかさっぱり分からないままタクミはムスっと頭一つ高い女の整った白い顔を見上げた。
それに気をよくしたように、ルクレシアはにっこりと微笑む。
微笑むと、それまでの尊大な雰囲気は幾分か和らいで、柔和な様相になった。

「そうだな。だが、タクミの恋人と私は同僚でもあるんだ」
「え・・・同僚?」

あまりにも唐突に接してこられたものだからつい頑なな態度をとってしまったが、もしギイとタクミの関係を知っていてなおかつギイの同僚と言うことであれば、もしかしたらあまりにも失礼な態度だったのではないだろうか。

「ごめんよ、タクミ。アイツがあんまり隠し立てするものだからついこちらも躍起になってね。許してくれ」

タクミの内心の動揺を推し量ったようにもう一度ルクレシアがにこりと笑う。

「す、すみません・・・あの、どなたか存じ上げなかったものですから」

先ほどまでの疑うような視線を恥じて、おろおろと泳がせながら謝罪をした。

「いいや、悪いのはこちらだよ、タクミ。ギイにね、カワイイ恋人がいるというのは分かっていたんだが、アイツときたらどこまで大事にしているのか写真すら見せやがらないものだから、つい調べてしまった。ま、君の写真をうっかり机の上に置き去りにしたアイツの過失と言うことなんだが」
「はあ・・・あの、ギイとはずっと・・・?」
「16歳で院に入ってから私はあの研究室に出入りしていたからね。かれこれつきあいは10年ぐらいにはなるか。まあその間アイツは日本にもいたからずっと一緒って訳じゃないんだが。タクミとは日本で知り合ったんじゃないのか?」
「・・・そうです。女子校で」
「そうだろうな。君のプロフィールは一般人と違ってすぐに調べが着いてしまうからね。そうだろうと思った」
「調べたんですか」
「悪く思わないでくれ。必死な隠し方といい、どんなカワイコちゃんかと思って、ついこちらもムキになってしまってね。会わせろと言っても会わせないから」
「あ、すみません、ギイが、失礼を」
「タクミがあやまるこっちゃないだろう」

ルクレシアは堪えきれずに吹き出した。

「だが本当に君たちは夫婦のようだな。さしずめ夫の不始末を詫びる奥方といったところか」
「や、やめてください。そんな・・・恥ずかしい」
「ほお。なるほど、そうして頬を染める様もずいぶんとセクシーだ」
「ミス・モーガン!」
「悪いねぇ・・・だが、まさか天才バイオリニストをモノにしてると思わなかったが。あのタクミ・ハヤマがこんなにかわいらしい人とは・・・」
「別に、可愛くなんか・・・」
「やっと会えてよかったよ、タクミ。・・・しかし人妻か」
「妻っていうの、やめてください!」

タクミは顔を真っ赤にして、華奢な体をよじった。
先ほどから、夫婦だの、奥方だの、人妻だなどと言われ続けて羞恥心が募っていく。
恥ずかしくてたまらない。

「なあ、タクミ」

羞恥に溺れるタクミを満足そうに眺めていたルクレシアは、不意に身を屈めてタクミの耳に囁いた。

「な、なんですか」
「わたしもさあ、女の子が大好きなんだよ、アイツと同じでね」
「え?」

危機感よりも、この華やかな美女が?と驚愕の方が勝ってしまう。

「今フリーで寂しい身なんだけど」

言われてルクレシアの目をまともに見てしまったことを後悔した。
その双方は完全にタクミの大きな黒い瞳を、出会ったときと同じように再び捕らえてしまう。

「ミス・モーガン・・・」


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いきなりすみません。
いつもの百合ギイタクなんですが、ギイが名前だけの登場ですみません。
さて、このルクレシアもかなりの知的美女です。かわいこちゃんをからかうのが大好きです。
モテるからできるワザかもしれません。
このお話は、私が今スランプっぽいので、リハビリがてら書きました。というわけで、仮題なのです。
こんな感じが今頭を駆け巡っております。
ちゃんと形にするかはまだ決めて無い状態で、すみません。


弱ペダ・・・につきまして拍手ありがとうございました。
また、しのさま、ラッキーさま、コメントありがとうございました。
ご心配おかけしまして・・・。なんとか挽回策練っているところです。
一度切り替えするのが一番良いのかもしれませんね。

非公開メッセージもありがとうございます!
(6/20 03:55 イニシャル"K"の方)
ご心配かけてしまってすみません。
私は基本はハッピーエンドしか書きませんので、章タクですれ違いがあったとしても、最後はハピエンですね(^^)
長い間恋人同士だと、そういうことも中には試練として発生するかな、と。
ブログ、本家も別冊も目を通してくださってありがとうございます!休むとすれば、7月か、8月か、9月のいずれかで考えてますが、まだ決定してないです。
さてさて、弱ペダ!
主人公だけでなく、脇キャラも含めて人間模様が鮮やかで、成長物語としてもとても楽しめる良質の漫画だと思います!
そして、福留・金城世代、わたしも大好きですー!しっかし、言動含めてみんな30代半ばぐらいか!?としか思えないほどの(笑)成熟ぶり・・・。
決めゼリフが出るたびに、私はこんなに大人だろうか、考えて生きているんだろうか・・・と自己嫌悪に陥ります(^^;)