なぜかとっても威圧的なお姉さんに引きずられ、章三も一緒に行くことになった。
下着に囲まれてほんのり頬を染める章三を見て、託生は溜飲を下げる。

「まず胸のサイズ測ってから、見繕おうかしら」

個室に案内されて、遠慮なく服を剥がれて、サイズを測られることになった。章三はドアの外で待っている。
女性に上半身とは言え、裸を見られるなんて絶対恥ずかしいと思うのだが、特殊な状況のせいなのか、今のカラダが女性のせいなのか、羞恥心を感じない。

というか、頭がなんだか麻痺していて、目の前で起こっていることが他人事のように思える。 
サイズ測定の結果はUSサイズで”D”とのことだ。

「ちょっとそこで待ってて。いくつか持ってくるわ」

もう、ここまで来たらお任せするしかない。
特に返事を期待していないお姉さんに託生は頷いた。

そして持ってこられた下着の数々・・・。

「どれも似合うと思うのよね~。黒もいいけど、白もいいし・・・ラベンダー色なんかも絶対に合うわね。サックスもいいし。・・・彼氏に見てもらうか」

託生の了解を得る前に、下着を手に持ったお姉さんは、仕切りのカーテンを閉めて託生を隠してから、ドアを開けて章三を呼ぶ。
おそらく章三も逆らうことはできないだろう。

しばらくして入ってくる気配がした。

「これからいくつか試着させるから、一つずつ見ていって」
「え、僕がですか?」
「貴方が気に入らないと意味ないでしょ」

今更恋人ではありませんと否定もできず、章三も反論もせず目元を赤くして黙り込んでいる。
こうなれば成り行きに任せるしかない。

カーテンの向こうでブラを付けさせられて、章三の前に引き出される。

黒の透けないタイプのレースでワイヤーが入っている。
肌に当たる硬い感触が、女性用のかっちりした下着に慣れない身には少しつらい。

少し気にしていると、顔を赤らめた章三が目をそらしながら聞いた。

「なんか、気になるのか?」
「あ・・・ちょっと・・・ワイヤー?なのかな、なんか下の方が・・・」
「あら、ノンワイヤーの方がいいのね。じゃあ、コレがいいと思うわ。ノンワイヤーでもこれは胸のカタチが綺麗に出るから」

差し出されたのは、総レースの淡いサックスブルー。
胸がこぼれないように脇をしっかりサポートするカタチだが、そのかわり胸元ががらりと開いていて、むしろそっちからこぼれそうなデザインである。
繊細なレースはまるで芸術品のようで、イタリー製だというそれは単に造形だけ見れば非常に美しい逸品だと言わざる負えない、だが・・・コレは・・・

「あのこれ、透け」
「じゃ、これで決まり!と。・・・もうワンセットぐらいあった方がいいわね。これのオフホワイトにしましょう。とてもsexyだと思うわ」
「いや、セクシーはいらな」
「はい、決まり。・・・で、貴方、まさか服はそのまま行くつもり?」
「え、服?」

確信犯なのか、お姉さんの早口の英語に全く口を挟むことができずに、そのスケスケの下着を2セット購入することに、いつの間にかなっている。

「そのジーンズ、確かに細身だけど、あなたさらに細いからサイズが合ってないわ。しかもメンズでしょ?・・・そうね、そこで待ってて」

止める間もなく彼女は白に近い淡い水色の布を持って戻ってきた。

「下着を着けたら、コレを着なさい」
「え、でもこれ」
「いいから、サービスよ。サンプル品だから気にしないで。スタイル良くないと着こなせないけど、貴方なら問題なし。ちゃんと下着も上下着けなさいよ。リゾートでそんな色気のない格好してたら、もったいないでしょ。彼氏にもいい気分させてあげなさい」

さんざんなことを言われたあげく、有無を言わさずソレを押しつけられ、これは包んでおくとオフホワイトのセットは持って行かれ、サックスブルーの下着とともに試着室に一人取り残される。

色気とかセクシーは必要ないとか、章三はそもそも彼氏ではない、とか、色々と言いたいことはあったが、何も言えなかった。
いや、言わせてもらえなかったというべきか。
気がついたらここまで話が進んでしまった。 

とりあえず手渡されたソレを掲げて広げてみる。
ふわりと薄いコットンの生地が宙を舞う。

「これって・・・」

少しタイダイ柄のようなムラのある染めの手触りの良い薄い水色のドレス。
ノースリーブで、胸元は深く切れ込みが入っている、腿のあたりまでボディラインが出るようにぎゅっと絞られ、腿のきわどいところから、共布の生地がフリルのように幾重にも重ねられ、広がっている。
問題は・・・裾がアシメトリーなのだ。
つまり、左腿の、ほぼ付け根近くから右足の膝上ぐらいまで斜めにフリルが施されている。

「・・・とりあえず着てみるか・・・・・・」

ここまで来たら、もう流されてみようかと思う。いやあのお姉さんに逆らう気力もないこともあるかもしれない。
レディースフロアで完全アウェーだし。

伸縮性のある素材だったので、頭から被って着ることができた。

「ふう」

一息吐いて、目の前の全身鏡を見ると・・・

「あ・・・やっぱり」

往生際悪く、元から履いていたボクサーを脱がずにいたのだが・・・

「裾から・・・見えてる・・・」

しかも、ボクサーがグレーだったので、色が透けてしまっている。
こうなったらもう、あのショーツをはくしかないのか。
サックスブルーの、ブラと同じく総レースで作られたフレンチブリーフ型のショーツを手に取る。
まさか人生で女性ものの下着を上下着けることになるとは思わなかった。





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こんばんは。
このたびも、あれよあれよというまに、託生くん流されていきました。
そして、章三何気に美味しいシーン(?)の連続です。結構鼻血抑えるの大変だったのではなかろうか。
さてさて・・・まだ章三と託生の珍道中続きます~。 

12/20の記事につきまして、拍手ありがとうございました!
また、ちーさま、しのさま、コメントありがとうございました。
おこがましい変なアテレコですみませんでした!
お二人とも、揃って体調崩されて・・・(涙)本当にご自愛ください。
早いご回復を祈っております!