お待たせしました!
Beach 5.の続きです。




章三に指摘されて、その視線を辿ると、はだけた胸。

いつもバスローブなんてきっちり閉める習慣なんてないので、動いた隙にずれてしまったようなのだが、そこから右胸がこぼれ落ちてしまったのだ。
はっきりと乳首が見えてしまっている。
悲鳴をこらえて、慌てて胸を掻き合わせた。

「ご、ごめん・・・変なの、見せて・・・。慣れてなくてっ」
「・・・いや、別に・・・」
「・・・」
「・・・」 

部屋に微妙な空気が流れていく。
二人とも無言のまま、視線さえ合わせることもできずに、お互いに明後日の方向を向く。

「あっ、その・・・そういえば、お前、下着は、どうするんだよ」

目を合わせないまま、章三が託生に問いかけた。
ある意味、目を合わせていたらまともに質問できないような内容だ。

「へ?下着?」

託生はぎょっとしたように章三の方を振り返ると、同様に振り返った章三とばちりと目があった。
二人でまた真っ赤に頬を染めて、慌てて目をそらす。

「だ、っから・・・ほら、あれだよ、ブ・・・ブラとか・・・パン、ツとか」
「・・・ぁ」

下の方は、まあ、最悪持ってきたのを履けるが、ブラはどうしようもない。
・・・水着を代用したらいいのだろうか?
でもこれをずっと着けているのはちょっと肩が凝りそうだ・・・。

「さすがに、僕も女物の下着は買いに行く勇気はないからな」

託生から見ると女物の水着を買ってきた章三の勇気は、それなりのものだと思うのだが、それでも下着はハードル違いらしい。

「そう、だよね・・・」
「いや、お前は行けるだろう?」
「へ?・・・いやいやいや、買ったことないし!」
「当たり前だ。そうじゃなくて、今、お前女なんだから」
「お、んな。そ、そうだったね。でも、え、僕が買いに行くの!?」
「そりゃそうだろ。お前・・・確かにここは海外だが、薄着で下着なしだと、・・・う、映るぞ」

さすがに何を言っているか分かった。

映るのは、乳首だ。
リゾート地らしく開放的にノーブラでピタピタのTシャツ一枚のみ被って外を堂々と歩いているお姉さん方もお見かけしたが、自分がそれをしたいわけではない。
こちらに来てから、海と部屋を水着で一往復しただけだったのであまり気になっていなかった。

「そんなコトしたら、お前、今日の騒ぎどころの話じゃないだろ?」
「う、うん。でも僕のカラダなんて」
「いいから自覚しろよ、お前、何回言ったら分かるんだ・・・分かった。ついて行ってやるよ。ついでに服とか買おうぜ」
「え、いいよ!下着一式あれば、それで」
「・・・ほんと自覚ないな。じゃあさ、試しに持ってきたにデニム履いて見ろ」

しょうがないので、履いてみると、ウエストが余った。
身長も変わっていなさそうだし、サイズ感も変わった感じはしていなかったからあまり気にしていなかったが、言われてみると腰に違和感がある。
普段も細い方なのだが、よく見ると今は折れそうにくびれている。
ワンサイズほどダウンしたようだ。

「・・・ずり落ちそう」
「だろ?」

二人でまさかの女性モノを買いに行く羽目になった。
ジーンズは無理矢理ベルトで締め上げ、胸元はストールを首に巻いて垂らし、なんとかノーブラ状態が分からないように隠す。
リゾートなので、ゆったりとしたリラックススタイルと言えば、そう見えなくもない。
 
が、暑苦しいといえば、暑苦しい。



そして到着した目的の場所。
 
「・・・すっごいハードル高いんですけど」

二人でリゾートらしいゴージャスなランジェリーコーナーを前に棒立ちで立ちすくむ。
正直言って、気分は敵地にこそこそ乗り込む秘密諜報員の気分だ。
決して、こんなご縁でも無い限りは足を踏み入れたくなかった。

「ばか、堂々としてろよ」
「ちょっと、もう適当に選んで帰ろうよ・・・この辺ので」

章三が、やはり顔をひきつらせたまま肘で託生をつついてくる。
はやく終わらせたい一心で、託生は、手を伸ばして取ってみた。
サイズがよく分からないが、恥ずかしさがそれを上回り、もう何でもいいから買って帰りたいという気分でいっぱいだった。

「・・・葉山、僕は別にいいが・・・本当にそれでいいんだな?」

章三が、手に取った下着をちらりと横目で見て問うてきた。
何を聞かれているのかよく分からない。

「え、別になんでも」

言われて手元に目を落とすと・・・ブラは、まあ、普通なのだろうが・・・

ショーツのほうが、異様に布が少ない。
少ないというか、ヒップに当たる部分が、紐だ。紐という以外の表現を思いつかない。

これ、いわゆる、Tバック!?
うわあぁぁぁ!!ないないないない!!!

託生は慌てて戻した。

「なにか、お探しですか?」

凛とした声が掛けられる。
見ると、スーツをビシっと着こなした美人店員だ。

「彼女がインナーを探しているのですが、サイズがいまいちよく分からなくて」

慌てて声が全く出ない託生に代わって、章三が堂々と応える。
いざとなれば、割り切ってしまえるタイプだ。頼りになる。このシチュエーションじゃなければ、かっこよかったと思う。

赤池君、僕が本当に女の子だったら惚れてたかも! 

が、そう思ったのは一瞬だった。

「一緒に探してやってもらえませんか?」

赤池君、逃げたー!!

横目で睨むと、肩にポンと手を置かれた。

「僕その辺で休憩してるから」

だがそうは問屋が卸さなかった。

「あら、その必要はないわよ、彼氏」

お姉さんが、思惑を見透かしたように長い腕を優雅に伸ばして章三を引き留める。
元々背が高いのに10センチぐらいのピンヒールの為に、目線が章三より上だ。

「恋人を飾るランジェリーでしょ。あなたもつき合いなさい」

当然よね?マスカラの乗った長いまつげの大きな目で語って、ウィンクした。





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ここからしばらく、章三と託生ちゃんのドタバタが続きます。二人でふわふわしながら照れたり目を逸らしたり赤面したり絶句したり、な感じになると思います。

次は、百合ギイタクのハロウィンネタ・・・(いつの話やねん)になると思います。
読んで・・・下さると嬉しいですが、こんなネタですみません。
こちらもランジェリー系です。
あ、生々しくはならないと思います。・・・のはず!

11/17の記事につきまして、拍手ありがとうございました。
しのさま、コメントありがとうございました。
年末、色々盛りだくさんですけど、なんとか乗り切りましょうねー!!