ご挨拶
いつも拍手頂きありがとうございます。
このお話は、拍手頂いた方、および、私の日記ページに来て下さった方に先に読んでいただこうと思ってこちらにUPしました。
拍手SSは、こちらで五つ目です。

腐のヴィブランテ、続いてしまいました。
でも楽しいです。息抜きに読んで頂けたら、嬉しいです。

はじめましての方へ
こちらは「ようこそ『腐のヴィブランテ』」の続きです。
良かったら ↑ も読んでみてください。m(_ _)m
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「腐のヴィブランテ:第3の男?」







あの葉山託生が、見慣れない男と歩いていた。





「幸子、第三の男かもしれないわ!」

ある日、なんの前触れもなく親友の菜緒が口走ったその言葉を、幸子は一瞬聞き逃した。
イタリア語の授業中だったからだ。

「な、菜緒ちゃん、今なんて?」

だが、授業中だと窘めることはどうしてもできなかった。『第三の男』というキーワードが聞こえたような気がして。

『第三の男』というキーワードは、ヴィブランテメンバーの中では非常に重要だ。
なぜならそれは、人気No1受キャラの『葉山託生』の本命を指す言葉だからである。

誰にも優しく、朗らかで、あれだけモテるのに恋人がいない様子の音大の二年生。
本命はいつも一緒にいる佐原和也かと思われたが、どうも佐原和也の少々余裕のない様子と、葉山託生のクールな態度を見ていると、この二人は和也の一方的な片思いに見える(※ヴィブランテメンバーズにとっては)。

託生の切なく響くバイオリン。
あれは和也に捧げられたものではなく、おそらく本命の男、つまり第三の男に違いない。
これがメンバー達の共通した見解であった。

「第三の男が見つかったかもしれないのよ」

菜緒は幾分声を潜めて、もう一度幸子に囁いた。

「第三の、男・・・」
「今日、有志のミニコンサートあるでしょ?それでだと思うんだけど、なんか託生が男を一人連れてるの!」
「一人?」
「そう、一人!・・・ってところが、超本命っぽくない?」

興奮した二人のひそひそ声が徐々に大きくなっていく。

教授の視線が突き刺さった。

あ、ヤバ。

幸子は筆談に切り替えた。
隣の菜緒のノートに書き込む。

『続きはランチで』
『OK!』





「ほら・・・いた!ラッキー!」

ランチタイム。
学内のカフェテリアで、運良く託生を見つけた二人は、極力さりげなさを装ってその後を付けた。
託生が座ってから追いかけたのではその周辺に座れない可能性が高い。
なぜなら、葉山託生の周辺にはいつも人が寄って来てしまうからだ。

「赤池君!」

託生が笑って手を振った先には・・・あ、いい男だ。
赤池君というのね。

まじめそうで清潔感のあるルックスはハンサムで好感が持てる。
意志の強そうなまなざしは、頭の回転も速そうだ。。
おそらく託生より背は数センチぐらい高い。
総合的に「攻」的には十分、アリ、だ。

アリって・・・。

思わず自分の『ヴィブランテ』的思考に苦笑する。
すっかり染まってしまった。

気が付くと菜緒はすでに託生達の座るテーブルの隣を陣取っていた。
相変わらず行動が早い。
あわててそこに駆け寄る。
託生はこちらに背を向けているので好都合だった。

「・・・元気してたか?」
「うん、赤池君の方こそ」
「僕は別に、特に変わりないからな。お前の方がろいろあるだろ、その・・・」
「変な気、使わないで。むしろ僕今充実してるし」
「まあ、そうみたいだな」

相づちを打ちながら『赤池君』が控えめに頷く。そこに何か含みを感じるのは自分が色眼鏡をかけて見ているせいだろうか?
周囲を気にしているのか、二人ともずいぶん小声だった。耳を澄ませて意識を集中していないととても聞き取れないぐらいに。

ここまでの会話は、特に普通に思える。ただ一点を除いては。
ー変な気使わないでー とはどういうことなのだろうか。
なにか託生には気を廻されるような何かがあるというのだろうか。

だが、確かにそう言われれば違和感はない。
おそらく託生を知る10人中10人が、葉山託生は何かを抱えている、と断言するだろう。
それが、葉山託生の魅力の一部でもある。

「もう、お前は大丈夫なんだよな」
「うん、大丈夫だよ、ちゃんと目標があるし、それに・・・ちょっとそんなこと言ってられないぐらいに忙しかったり」

託生は、楽しそうにふふ、と笑った。
かわいい・・・。いやいや、会話に集中しよう。

「今のお前、正直言って前よりずっと、なんて言うか・・・生き生きしてるな」
「そう?」
「ああ。まあ、安心したよ、やっぱり納得いかないじゃないか。いや、僕が言うのも変な話だが」
「ううん。赤池君はそう言う権利があると思うよ?」
「・・・口を出さないって決めてるんだが、やっぱりな」
「・・・赤池君」
「直後のお前見てると、たまらなくて・・・お前が何も言わないから。見てる方がつらかった。・・・自分に苛ついたよ」
「僕は平気だよ。大丈夫だから、僕なんかのために、心を痛めたりしないで」
「分かってる。だけど、お前はもっと怒ったり悲しんだりしても良いと思うんだ」
「そんなこと、ないよ。・・・もう、充分だよ」
「あるさ。まったく・・・無理に感情を押さえつけてるわけじゃないのは分かっているんだが・・・人がよすぎるというか、なんというか」
「そんな気にはあまりならないんだよね。・・・なんかいまいち現実感がないのかもしれないけれど」
「僕は、始めからおまえが怒ったり悲しんだりしているところを見てないと思うぞ」
「ううん。赤池くんにはいつも、全部言ってたよ」
「・・・このお人好しが」

後ろを向いているので、託生の表情は分からない。
だが、赤池氏の表情は痛ましそうに歪んだ。
彼にそんな表情をさせる何かが、過去託生には起こったらしい。しかも託生はそれに対して怒りも悲しみもしていないようだ。
むしろ現実感がない、というほどのなにか。

「赤池君、ほんと優しいよね」
「別に、普通だ。あんなの見てたら誰だって」
「うん。それでも・・・いつも連絡とか、ありがとうね。正直、救われてる」
「葉山・・・」
「赤池君がいるから、がんばれるのかな」
「お前は自分でちゃんとがんばってるだろ。むしろ、がんばりすぎなくらい」
「もっと、がんばりたいんだ。こんなのじゃ全然足りないよ」
「葉山」
「全然、・・・なんにも届かないんだ」
「葉山」

赤池氏が向かいの託生の方に身を寄せた。その手は、託生の腕に添えられる。

「無理して泣けとか、そんなこと言うつもりはない。だけど、たまには僕を頼れ」
「っ・・・赤池君」
「・・・そんな顔して、まさか一人で泣いてないよな?」
「泣かないよ。泣いたりなんか、しない」
「泣く場所ぐらい、僕だってお前に与えてやれるんだぞ」

・・・。
何・・・。
何なの・・・。
何なのよ、この燃えたぎる会話!!

幸子と菜緒はカフェテリア中に響く声で、危うく叫びそうになったのだった。




友情から恋に発展する前段階のフラグ立ったんじゃない!?これ!?




と。



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微妙に、章タク風ですよ。 
しかも幸子と菜緒の妄想だけじゃなくて、会話そのものが、もう章タク風になっちゃって・・・。
あぁ。
これ拍手御礼にしていいのか、超迷いましたが・・・今後、もひとつ章タク風味のを表にUP予定なんで、もう開き直りました。

ギイが不在の時、やさしい章三は託生をさりげなく支えていたのだろうなぁ。
そして、親友に対する苛立ちなんかもあっただろうなぁ。大事な恋人をこんなに傷つけて、なにやってんだと。
なんて考えながら書きました。

実はこれ、まだこの先考えてるので、また拍手御礼として出したいと思います。
今度はあまり間が明かなかったらいいなーと思ってます。